帝都艶上(えんじょう)

「ほら、ここ……。切られているだろう」
 そう言って肩にある新しい傷を見せる。鋭利な刃物でつけられたような傷跡はしかし、零号医療班スタッフにも――否、設備の整っていないその辺の町医者でも容易に治療が出来そうなくらい、小さく浅いものだった。
「……そうだね。痛い? 礼央」
「――ああ」
 神威は口唇を寄せ、そっと傷に舌を這わせる。僅かに鉄錆の味がした。
 触れたところから、すっと傷口がなくなっていく。殺生石の力で〈治療〉をする際、傷ついたところが疼き、甘く痺れるような感覚があるそうだ。礼央はふるっと大きな身体を震わせて、軽く息をついた。
 神威の舌は徐々に腕から手のひらへと下がっていき、ぴちゃぴちゃと礼央の指を舐めまわしている。
「そんなに、この手が好きか」
「ん……」
 礼央は唾液まみれの指で、シャツの上から、神威の粟粒のような乳首を引っ掻いた。
「ひゃうっ、ん」
 その瞬間、情けない声をあげてのけ反ってしまう。軽く引っ掻かれただけなのに、そこはピンと尖り、じんじんと熱を持ち始めている。それが少し悔しかった。
「まだ何もしていないのに、とんだ淫乱だな」
「そ、そんな……っ、ちが、」
 違う、とは言い切れない。神威は下唇を噛んで横を向いた。悔しさと羞恥に目元が赤く染まっていくのが自分でも分かった。そんな神威の表情を見て愉悦を覚えたのか、礼央はにやりと笑った。慣れた手つきで神威のシャツをたくし上げると、痛々しいほどに尖った乳首の先を、くるりくるり、円を描くように優しく撫でる。
「ん、ふ……、う」
「ここがそんなに感じるのか。分からないな、俺はこんなふうにされたってくすぐったいだけだがな」
 言いながら、礼央はベッドサイドのワゴンに片手を伸ばし、再び神威に触れる。
「あ、礼央、な、あ、ふあっ……冷たっ」
 神威は冷たくぬるぬるとした感触に驚いて目を開けた。礼央の指に何か白いものが付着している。ぷんとバニラの香りがたって、すぐにそれが生クリームだと知れた。
「礼央、何を……、あ、あ、あ」
 手付かずのシフォンケーキに添えられていた、三人分のクリーム。それをたっぷりと上半身にまぶされる。ぬるりとしたいやらしい感覚と、クリームの甘ったるいにおいに噎せかえってしまいそうだった。
「だめ……」
 礼央は器用に神威のキュロットと下着を下ろし、クリームにまみれた手のまま、半勃ちになっているそれをやんわりと握った。
「うあっ、や、やめっ」
 むくむくと礼央の手の中で欲望が育っていく。神威は足を突っ張って抵抗しようと試みるが、巧みに擦りあげられて力が抜けてしまった。
「甘いものは嫌い……だったな」
「はっ、はあっ、う、ンッ」
「ならば、このデコレイションケーキは全て――責任を持って俺が食さねばならないな」
「ケーキって、あ、あっ!?」
 礼央の唇が神威の肌に吸いつく。胸元をぺろりと舐められ、ぞくりと身が震えた。
「ん、んん」
 小さなキスを何回も落とされ、乳首を丹念にしゃぶられる。
「ひあっ、あぁ、あ、あ、ああんっ、や、やめぇっ」
 コリ、と甘噛みをされ、神威はびくんと身体をしならせた。神威の身体を濃厚に味わいながらも礼央の右手は、ゆっくりと焦らすように反りかえった欲望をしごいている。
「うあ、も……やだっ、こんな……ぬるぬるして、あうっ、あ……ふあぁんっ」
「まだだ。そんなに簡単に果てることは許さない」
「あ」
 礼央は神威の窄まりに、クリームと、神威の先から滲み出る液体にまみれた指を添えた。ぬち、と卑猥な音をたて、礼央の指先が神威の後ろに埋まり、押し広げていく。
「う、っく……、ン、ふ、うぅ」
 神威の身体は、すっかり毎日施される愛撫に慣れ、期待するように窄まりがひくついている。
「やめろやめろと言うくせに、ここはもう欲しがっているではないか」
「あ、そんな、だって……うんンッ」
 ぬる……と、礼央の指が中に侵入ってきた。神威の感じるところを知りつくした指先は、迷わず奥へと進み、前立腺のあたりを執拗になぶる。
「う、あ――」
 イく――!!
 しかし神威の劣情は発されることはなく、
「ひぁっ……、え?」
 屹立し、透明な蜜に濡れそぼった根元をきつく掴まれていた。
「何これ、何、いっ、いけな……っ」
「勝手に達するなと言ったばかりだ。少しは堪えろ。……出来るだろう?」
 礼央のサディスティックな囁きに、こくこくと頷く。いい子だ、と礼央は神威の耳を咬んで微笑うと、器用に神威の身体を裏返した。背中に感じる礼央の熱い肌……力強い手に腰を掴まれ、ぐっと双丘を割りひらかれる。そして――。
「あ、あーっ、ああぁ、入って、くるっ!」
 ぐちゅぐちゅに溶けた神威の孔に、逞しい欲望が入ってきた。
「うあ、あ、あ、あぁ……っひ、ぐ、ううう、ぐっ」
 射精感がこみ上げるのに、前に回された礼央の指がぎりぎりと根元を締めつけ、がっちりとそれを阻む。狂いそうな熱と衝動が身体の中へ逆流する。
「うああぁっ、あ、あー、あー……」
初めて味わわせられる恐ろしい圧迫感に、神威は四肢をガクガクと痙攣させ、四つん這いの姿勢さえ維持出来ず、ついに上半身から崩れ落ちた。

 

 

 

  

 

 

この続きは、2009年12月26日発売の
帝都艶上えんじょう
でお読み頂けます。どうぞお楽しみに!

 

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